アルコール依存症の治療で入院中の現役依存症患者が入院・治療、こぼれ話や裏話などを気楽に伝えていきます。
時代が変わったら呼び方も変わった
昔は依存症なんて言葉はなかったと思う。またもしそれがあったのだとしても普通に使われてはいなかったし、普段耳にする言葉ではなかった。急性と慢性の区別はあったが、今でいう中毒も依存症もごった混ぜの状態で全てが中毒の一言で片付けられていた。お酒の場合はアルコール中毒、タバコの場合はニコチン中毒と言われていた。食事で当たれば食中毒。食中毒は疾病的な使われかたしかされていなかったが、アルコール中毒とニコチン中毒は今で言う依存症としての意味合いの方が強い使われ方をしていた。しかしこれでは言葉として、分類として、おかしいということになり現在は中毒と依存症を使い分けるようになったようだ。
私は1976年生まれだがかなり大きくなるまで依存症という言葉に親しみはなかったです。しかし中毒という言葉は色々な場面でよく耳にしていた。私が子供の頃、アル中と呼ばれる人には何度も会っていた。親などからあの人はアル中だからなどとよく聞いていました。しかしその人達は今でいう依存症であり中毒症状を起こしている人ではなかった。もちろんお酒が切れてきたり飲みすぎたりしたら中毒症状になっていたとは思うが・・・小さな頃は食中毒はお腹は痛いし吐き気がして苦しいのに、なぜだかアルコール中毒の人は楽しそうなのが不思議だった。怒りっぽくなったり暴れたりする人も中にはいたが食中毒のようにもがき苦しんでいる人は見た事がなかった。なぜ同じ中毒なのにこんなに違うのだろうと不思議に思っていた。ただ言動がおかしかったりする人を見ることは時々あった。当時、急性アルコール中毒での死亡事故がよくニュースで報じられていた。なぜアル中は楽しそうなのに急性アル中だといきなり死ぬんだろ?と不思議だった。しかし急性アルコール中毒ではなくてもアル中と言われる人は早く死んだりするらしいとは聞いていた。となんだか話が繋がらず腑に落ちないまま何年間もの時間が過ぎて行きました。
物心がついてくると急性アルコール中毒で人が倒れる現場などを目にする機会が増えてきて危険なものだとわかってきた。大量のお酒を短時間で摂取することで急激にアルコール血中濃度が高まり体内のさまざまな所に障害を引き起こすのだ。自分でもお酒を飲む年頃になると何度か自身でも急性アル中に近い状況を経験した。その日の体調次第で大量の飲酒をしても何ともないこともあるし、たいした事がない飲酒量なのに中毒症状に近い苦しい状況になった事もある。しかし依然としてアルコール中毒という言葉の使い方が解せなかった。そうこうしているうちに依存症という言葉を色々なところで聞き始めた。私の記憶では平成になって以降、ようやく一般的によく耳にする病名となったのではないだろうか。
禁煙、減煙にオススメ!昭和の頃はニコチン中毒という言葉はあったがアルコール中毒ほどメジャーではなかった。その頃、現在のような喫煙者差別的な文化はなかったし、禁煙=悪というような風潮もあまりなかった。だからニコチン中毒が病気とはあまり認識されていなかった。電車でもバスでもオフィスでもどこにでも灰皿があった。まさかほんの30年足らずでこれだけ価値観が変わるとは思っていなかったのですごい変化だと思う。電話が持ち運べるようになって携帯電話が普及して、Windows98の発売に行列ができパソコンの時代がやってきた。2000年にはミレニアム問題などと言って大騒ぎして私も徹夜で会社のPCや電子機器を見張っていた。それらの普及の早さ、時代の移り変わりに目を見張っているうちに今はスマホやタブレット、ウェアラブルコンピューターが当たり前の時代になっっているのだから、それ以上に人の価値観や感性が変化しているのは当然だ。隔世の感があるなどと言っていたら取り残されるのが現在の世の中だろう。しかし少し疑問なのだがニコチン依存症という言葉はアルコール依存症という言葉ほど耳にしない。お酒の場合はアルコール依存症ではないけどお酒を楽しむ人が多くいるからだろう。対するタバコの場合はほぼ確実に喫煙者=ニコチン依存症だからいうまでもないのかもしれない。だからニコチン中毒治療とは言わず禁煙治療という言葉が使われている。言葉の使い方というのもなかなか面白いものだ。
コーヒーや紅茶と一緒という人にオススメ!ギャンブルも昔からギャンブル中毒という言葉があったけど昔は依存症という言い方をほとんど聞かなかった。WHOは1970年代後半からギャンブル依存症は病気だと言っていたそうだが国内で聞くことは皆無だった。しかし平成31年(2019年)にギャンブル等依存症対策推進基本計画というのが閣議決定されてから世間の注目が集まり一気に病気として認知されはじめた。私は商売柄ギャンブル業界に関わっていたのでよく覚えているが、相談窓口がどんどん開設され節度を持って楽しみましょうというような内容のポスターやテレビCMなども沢山見られるようになった。
現在はどうなんだろう
前段では長々と関係ないことまで書いてしまったが、元々は区別なく中毒と呼んでいたが、それでは判別が難しいから、最近では現在進行中で心身に症状が出ている状態のことを中毒と言っている。対して、ある行為で中毒症状が引き起こされる事がわかっていても辞める事ができない、また中毒症状から解毒されていてもなんらかの症状が発生したりする状況のことを依存症と言っています。依存症患者の状況を説明すると、いわゆるシラフ状態は医学用語で喪失という状態であり、シラフであってもアルコールや薬物などの影響が精神や身体に及んでいわゆる離脱症状・禁断症状が発生します。アルコールやニコチンを摂取していると脳内からドーパミンが分泌されていて快楽を感じている。しかしシラフになるとそれがなくなってしまうので禁断症状が出始めます。その際に発生する症状は様々で初めのうちはイライラしたりするだけだが、エスカレートしてくると、せん妄状態になったり幻覚、幻聴などの症状が起こったりもします。また、患者は中毒症状が起こる事がわかっていても原因となるそれらの物質や行為に対する欲求が抑えられなくなります。そして摂取と離脱、高揚と落胆のスパイラルにハマっていきます。アルコールやタバコなどの物質だけではなくギャンブルなどの高揚感で得られる興奮とスリルなども同様です。最近では依存症と言われるものはほぼ全てコントロール障害とも言われています。
ちなみに私は友達には酒好き、少し距離のある人や口の悪い知り合いにはアル中、親族や病院の先生にはアルコール依存症およびコントロール障害と言われています。
言葉や言い回しといえば今ではタブーな言葉になってきているのであまり使われないが中毒=気狂いであった。しかしそれが悪意の満ちたものではなく好意的に使われていたこともある。その際はキチガイとカタカナ表記が多かったように思う。ギャンブル気狂いとかはあまり良い感じではないが釣りキチなんかは漫画のタイトルになってる程でさほど悪意に満ちたものではなかった。私も子供の頃は釣りキチ、虫キチと周りに呼ばれていたがさほど嫌な気はしていなかった。これも時代の移り変わりなのだろう。ある意味で少し寂しいような気もする。
中毒や依存症の治療は病院で?社会保険は使えるの?
昔から中毒と言われてきて、現在は依存症と言われている覚醒剤、酒、タバコ、ギャンブル依存症これらは全て保健診療で治療ができるようになっています。また入院した場合など生命保険の入院補償でカバーされることも多いようです。世間一般の健全な方から見ると、元はと言えば始めた自分が悪い。我慢ができていないだけじゃないのか。だらしがない。中毒や依存症は印象が最悪な病気です。しかし自力で治せない意思の力ではどうにもならないから病気としか言いようがありません。
依存症は一度はまり込むとなかなか自分では抜け出せない厄介な病気です。だから病気だと認定されたのだと思います。同じ精神疾患でも先天的な障害やパニック障害など不可抗力的なものとは異なるので理解されにくいです。また鬱や統合失調症などとの併発が多いのも特徴です。なので周りからはますます理解されにくくなっていきます。なってしまう(感染るわけではないので罹ってとは言い難いし、疾患とも言い難い)と難儀な病気です。
セックス依存症という言葉も聞きますがセックス依存症という病気はないそうです。強迫的性行動症という疾患と性依存症という依存症があるのだそうですが、どうにも線引きが曖昧ですしよくわからないのでセックス依存症については言及しないことにします。
入院治療などは滅多に必要とならないですし、あまり深刻になりにくいので話題は少ないですが他にカフェイン中毒、水中毒など中毒はと言われるものはまだまだ沢山あります。カフェイン中毒はいわゆる依存症かもしれませんが水中毒は食中毒と同じで本当の中毒です。最近ではスマホ中毒、ネットゲーム中毒などもあります。これらも正確には依存症です。デジタル系の依存症は深刻なものが多いようです。この辺りの依存症には、またおいおい触れて行こうと思います。
今後の展望
今後は依存症が細分化されもっと詳細な病名がついてくると思われます。すでに依存症の中でも色々なタイプがあると言われていてタイプごとに分類されている。また鬱や統合失調症などとの併発も多いので、その辺の合わせ技的な病名で呼ばれることも出てきそうだ。実際に躁鬱病、うつ病、統合失調症などはかなりのバリエーション展開になってきている。精神障害の病名は今後もどんどん増えていくだろう。薬物依存症も薬物によって症状が異なってくるので細分化されていくような気がします。診療科や医師の専門も細分化されてくるのではないでしょうか。
その4 このブログの行き先は
現在、アルコール依存症の入院治療中なのでその辺りのことも今後書いていきます。併せてニコチン依存症の治療も行っています。また入院するところまで禁酒、禁煙ができなかったので失敗者の目線での禁酒、禁煙方のレビュー、各方法のメリット・デメリットなどをしっかり書いていきたいと思います。入院治療の方法や経過などもお届けしますのでお楽しみに。
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